北広島市の資料や看板で「さんぽまち」という言葉を見かけて、何のことだろうと思った人は少なくないはずです。さんぽまちは北広島団地の愛称で、2017年度に住民の意見を取り入れて作られました。
この記事では、さんぽまちという呼び名の由来から、1970年に始まった団地の造成、宅地100坪という設計、そして今の姿までを公的な資料をもとに整理します。
- さんぽまちという愛称の由来と対象になる範囲
- 北広島団地がいつ誰の手でできたのかという成り立ち
- 宅地100坪と1周5kmの道という設計の中身
- 人口と高齢化がどう動き市が何をしているか
さんぽまちとは何を指す呼び名か

まず言葉の意味から確認します。さんぽまちは新しくできた地名ではなく、既にある北広島団地地区に付けられた愛称です。
散歩道から作られた造語
北広島市の公式説明によると、さんぽまちは散歩道をもとに考案した造語です。トリムコースのような道だけを指すのではありません。
公園、運動施設、自然、広い空を含めた、まち全体の健やかな生活環境を表現する言葉として作られました。地名ではなく愛称なので、住所の表記には使いません。
市は移住促進サイトの名称にもこの言葉を使っており、地区の呼び方として定着させる意図が読み取れます。
※出典 ◆ 北広島市「子育てしやすい さんぽまち(北広島団地地区)について」
※出典 ◆ 北広島さんぽまち(移住促進サイト)
誰がいつ決めたのか
愛称が制作されたのは平成29年度、つまり2017年度です。市が住民の意見を取り入れて作っており、小中学校の児童会と生徒会、各住区の自治会と自治連合会、多世代交流サミットの参加者が協力者として市の公式ページに明記されています。多世代交流サミットは2017年8月19日に開かれました。
子どもから大人まで意見を集めたうえで決めた名前ということになります。
※出典 ◆ 北広島市「子育てしやすい さんぽまち(北広島団地地区)について」
「さんぽまち」は2017年度に作られた比較的新しい愛称で、道の名前ではなく団地全体を指します。この呼び名の由来を知っておくと、この後に出てくる道や公園の話がまち全体の設計として読めるようになります。
ロゴマークに込められた形
ロゴマークは、窓の外に見える道と自然と空をモチーフにしています。同時にKitahiroshimaのKとDanchiのDをかたどった形です。ロゴの要綱が制定されたのは2018年3月20日です。
要綱には、子育てに適している北広島団地地区のイメージを高め、市内外へのシティセールスを支援するという目的が書かれています。
※出典 ◆ 北広島市「北広島団地地区ロゴマークの制定及び使用に関する要綱」
どこまでがさんぽまちか
ロゴマーク要綱は北広島団地地区の町名を定義しています。広葉町、栄町、輝美町、北進町、若葉町、南町、青葉町、白樺町、高台町、里見町、泉町、松葉町、緑陽町、山手町の14の町がさんぽまちの範囲です。
名前が似ている美咲き野は市の統計で東部地区、虹ヶ丘は西の里地区に分類されており、団地地区の定義には含まれません。
※出典 ◆ 北広島市「北広島団地地区ロゴマークの制定及び使用に関する要綱」
北広島団地はいつどうやってできたか

さんぽまちという愛称は新しいものですが、まちそのものは50年以上の歴史があります。造成の経緯を押さえると、今の街並みの理由が見えてきます。
1970年に造成が始まった
北広島団地の造成が始まったのは昭和45年度、西暦で1970年度です。分譲もこの年から始まりました。当時はまだ広島町という名前の自治体で、札幌圏の住宅需要に応えるためのまちづくりの核として計画されました。
造成の効果は町の人口にそのまま表れています。1970年の町人口は9,746人でしたが、1973年に14,163人、1976年に26,148人、1979年には32,287人へ増えました。
9年で3.3倍という伸びです。広島町が北広島市になったのは1996年9月1日で、その時点の人口は54,322人でした。
※出典 ◆ 北広島市「北広島団地活性化計画」
※出典 ◆ 北広島市「市のあゆみ」
国土交通省の資料では事業年度を昭和45年度から平成2年度としており、造成と分譲の中心となった時期は1970年から1977年ごろにあたります。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
事業主体は北海道
造成を行ったのは北海道です。市の公式資料は道営の住宅団地であり北海道の新住宅市街地開発事業と説明しています。北海道住宅供給公社の公式沿革には、北広島団地を造成した主体としての記載は確認できませんでした。
ただし2004年に北方型住宅の認定第1号として55戸を北広島団地に建設したという記載はあります。造成そのものと、その後の住宅供給は別の主体が担ってきた形です。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
ここまでの要点
造成から50年以上が経っているため、住宅や施設の更新期に入っている地区として見る必要があります。
行き当たりばったりの宅地化ではなく計画造成なので、道路や公園の配置に一貫した設計があると理解できます。
計画の規模
面積はおよそ440.9ヘクタールです。計画戸数は市の資料が約8,000戸、国土交通省のニュータウンリストが7,799戸としています。計画人口は資料によって幅があり、市の都市計画審議会資料が収容計画人口約31,000人、国土交通省の資料が当初計画31,000人で整理後27,000人としています。
当初31,000人を見込み後に27,000人へ整理されたと読むのが実態に近い数字です。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
数字で見る北広島団地の計画
造成開始
1970年度面積
440.9ヘクタール計画戸数
7,799戸〜約8,000戸真駒内と大麻に続く3番目
市の資料は、北海道が札幌市の真駒内団地と江別市の大麻団地に続く3番目の大規模住宅団地として計画したと明記しています。市の地域再生計画にも北海道で三番目の大規模住宅団地という記載があります。
ただし国土交通省の全国ニュータウンリストで北海道内のすべての事例を開始年順に並べると北広島団地の順位はもっと後になるため、ニュータウン全般で3番目と一般化することはできません。
市が示している通り、道が計画した大規模住宅団地として3番目という理解が正確です。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
宅地100坪という設計思想

北広島団地を歩くと、区画が広くて車が少ないことに気づきます。これは偶然ではなく、造成時の設計方針によるものです。
集合住宅を減らして庭付き住宅を増やした
国土交通省の資料は、北広島団地を集合住宅を少なくし庭付き住宅用地を多くとった低密度の団地と説明しています。宅地の平均は約100坪で、平方メートルに直すと約330.6平方メートルにあたります。同じ時期の大規模団地としてはかなりゆとりのある設計で、この広さが今も中古住宅の価格や使い勝手に影響しています。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
土地の使い方の内訳
440.9ヘクタールの内訳は、住宅用地が175.9ヘクタールで39.9パーセント、公園緑地が138.0ヘクタールで31.3パーセント、道路用地が78.5ヘクタールで17.8パーセント、公益施設用地が48.5ヘクタールで11.0パーセントです。
面積の3割以上が公園と緑地に充てられているのがこの団地の際立った特徴です。住宅用地の39.9パーセントに次ぐ配分です。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
住宅用地は全体の4割ほどで、公園緑地が3割を超えるという配分がこのまちの性格を決めています。今も感じられるゆとりは偶然ではなく、造成時の設計に由来すると読めます。
車と人を分ける歩車分離
住宅地の中へ車が入り込まないようにする計画が最初から入っていました。住宅地内への車両流入を制限する歩車分離の考え方で、歩行者と自転車のための専用道路が整備されています。子どもが歩く道と車の通る道が分かれているため、子育て世帯にとっては判断の材料になります。
道路用地は78.5ヘクタールで全体の17.8パーセントを占めており、車道と歩行者専用道路の両方にこの面積が使われています。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
集中駐車場という仕組み
車の出入りを抑えるために、各戸ではなくまとまった場所に駐車場を設ける集中駐車場が作られました。通称は車庫通です。自宅の前に車を置かない前提で作られた住宅地という点は、いま住むことを考えるうえで知っておきたい特徴です。
台数などの詳しい数値は資料で確認できませんでした。宅地が平均100坪あるため、後から敷地内に駐車場を設けている住戸もあります。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
1周5kmの道と25の公園

さんぽまちという愛称の土台になっているのが、団地の中に張りめぐらされた道と公園です。数で見ると規模がわかります。
団地を一周するトリムコース
北広島団地には、地区を一周する歩行者と自転車の専用道路があります。これがトリムコースで、1周およそ5kmです。時速4キロメートルで歩けば1時間15分ほどの距離になります。
車道と交わらない区間が続くため、散歩やジョギングを日課にしている人にとって使いやすい道になっています。
さんぽまちという名前は、この道の存在と切り離せません。
※出典 ◆ 北広島市「さんぽまちガイドブック」
公園は合わせて25か所
団地の中には総合公園が1か所、近隣公園が3か所、街区公園が21か所あります。合わせておよそ25の公園が地区内にあるという規模です。街区公園は住宅の近くに置かれる小さな公園で、これだけの数があると徒歩数分の範囲にどれかがある計算になります。
市内の公園全体は北広島の公園で遊具や設備ごとに整理していますので、子どもを連れて行く場所を探す段階ではあわせてご覧ください。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
ここまでを整理
車と分かれた一周の道があるため、散歩や通学の動線として日常的に使えます。
歩く道と公園がセットで整備されているからこそ、さんぽまちという名前が実態に合っていると分かります。
幅32mの中央通
団地を貫く幹線街路である中央通は、幅員32メートルで計画されました。国土交通省の資料でも団地の特徴として挙げられています。道幅に余裕があるため、冬に雪を寄せる場所を確保しやすいという実利もあります。
北海道の住宅地では、この幅がそのまま除雪の負担に効いてきます。一般的な生活道路が幅6メートルから8メートルであることと比べると、4倍を超える幅です。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
緑地が3割を超える意味
公園緑地が31.3パーセントという比率は、住宅地としてはかなり高い水準です。建物の密度が低く空が広く見えるのはこの配分によるものです。138.0ヘクタールという公園緑地の面積は、東京ドームの敷地に換算するとおよそ30個ぶんにあたります。
一方で、維持管理の対象面積が大きいということでもあり、人口が減った現在は管理のあり方が課題として議論されています。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
4つの住区でできているまち

北広島団地はひとつの大きな塊ではなく、4つの住区に分かれています。この単位が生活圏の基本になっています。
住区という考え方
団地は都市計画道路などで区切られた第1住区から第4住区までの4つで構成されています。国土交通省の資料は小学校区ごとの住区と説明しています。小学校を中心に生活圏をまとめる設計思想で、通学距離を抑えることを意図したものです。
440.9ヘクタールを4つに分けると、1住区あたりおよそ110ヘクタールという計算になります。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
14の町名
4つの住区の中に、広葉町から山手町まで14の町名が置かれています。町名だけを見ると数が多く感じますが、住区という単位で見ると4つのまとまりになります。1住区あたり3町から4町という配分です。
町名は住所の表記に使い、住区は市の資料や統計で使われます。
地区の資料を読むときは、町名で書かれているか住区で書かれているかを確認すると混乱しません。
住区と町名の関係を押さえておくと、物件情報や市の資料に出てくる地名の位置づけがすぐ分かるようになります。同じ団地でも住区ごとに駅からの距離感が違う点を意識して見るとよいでしょう。
住区ごとの近隣商業
それぞれの住区で使いやすい位置に近隣商業地域が指定され、商業施設やコミュニティ施設が配置されました。住区の中で日常の買い物が完結することを想定した配置です。車を使わずに歩いて用が足りる範囲を、住区という単位で区切った形になります。
ただし50年のあいだに店舗の入れ替わりがあるため、今の状況は現地で確かめるのが早い方法です。
用途地域は第一種低層住居専用地域
団地地区の大半は第一種低層住居専用地域で、建ぺい率40パーセント、容積率50パーセントでした。100坪の敷地なら、建てられる面積は40坪までという計算になります。一部の地区計画区域では容積率が60パーセントになっています。
高い建物が建たない前提で街並みが保たれてきたのは、この用途地域の指定によるものです。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
人口と高齢化はどう動いたか

さんぽまちの現在を語るうえで避けて通れないのが人口の変化です。数字で見ると、まちの課題がはっきりします。
1995年がピークだった
国勢調査をもとにした市の統計では、団地地区の人口は1990年に18,852人、1995年に19,163人でピークを迎えました。その後は2000年18,527人、2005年17,646人、2010年16,238人、2015年15,091人、2020年14,416人と一貫して減り続けています。
ピークから2020年までの25年で4,747人減った計算です。
※出典 ◆ 北広島市「地区別世帯数・人口の推移」
今の人口
市の統計によると、令和8年6月30日現在の団地地区の人口は13,894人、世帯数は7,377世帯です。同じ時点の市全体は55,936人なので、市民の約25パーセントが団地地区に住んでいる計算になります。
※出典 ◆ 北広島市「住民基本台帳人口」ピーク時からおよそ5,000人減った計算になります。
※出典 ◆ 北広島市「北海道北広島市に移住する方へ【北広島団地地区】」
数字で見る北広島団地の人口
1995年のピーク
19,163人2025年12月末
13,987人2023年度末の高齢化率
48.1パーセント1995年をピークに30年近く減り続けているという流れは、空き家や住み替えの話題につながる背景です。今の13,894人という数字は、この長い減少の延長線上にあると捉えるとよいでしょう。
高齢化率は48.1パーセント
高齢化率の推移も市の資料に残っています。2005年に団地地区24.2パーセント、市全体18.2パーセントだったものが、2016年4月時点で団地42.3パーセント、2021年3月時点で47.0パーセント、令和5年度末には48.1パーセントになりました。
同じ時点の市全体は34.3パーセントなので、団地地区が市の平均を大きく上回っています。2015年の住区別では第3住区が46.6パーセントで最も高くなっていました。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
世帯人数も減っている
1世帯あたりの人数は、1983年の3.25人から2016年には2.05人まで下がりました。内閣府系のガイドラインでは2024年3月時点で1.91人とされており、1世帯が2人を下回りました。
同じ家の広さに住む人数が半分近くまで減ったということで、宅地100坪という設計が現在の暮らし方と合わなくなってきている面があります。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
まちを立て直すために動いていること

人口減と高齢化に対して、市は複数の施策を並行して進めています。住むことを検討している人には、使える制度がいくつかあります。
フェニックスプロジェクト
2016年度に始まった地域再生計画が北広島団地フェニックスプロジェクトです。
住宅、まちづくり、公共交通、教育の4つの施策と9つの事業で団地の再生を進める枠組みで、25歳から44歳の若い世代の割合を18.0パーセントから累計で1.0ポイント引き上げること、空き家を50戸減らすことなどが目標に掲げられています。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
空き家と住み替えの支援
空き家の解体費を助成する制度は平成28年度に作られ、初年度は上限50万円、平成29年度以降は上限30万円で運用されました。平成28年度から30年度までの解体70件のうち37件が北広島団地でした。この補助金も令和5年度の見直しで終了しています。
市、金融機関、UR、建設業者、不動産業者が参加する住み替え支援協議会は2016年9月に設置され、空き地空き家バンクは今も情報提供の窓口として動いています。
市の空き家調査では、令和5年の空き家が市全体で406戸あり、うち144戸が北広島団地でした。市内の空き家のおよそ3分の1が団地地区に集まっている形です。
空き地空き家バンクの実績は、空き家の売却が29件の登録に対して16件の契約、空き地の売却が109件の登録に対して65件の契約でした。
※出典 ◆ 北広島市「空き家等対策計画」
※出典 ◆ 北広島市「北広島市の空き家対策について」
ここで気をつけたい点
支援制度は年度によって内容や上限が変わってきた経緯があるため、過去の金額をそのまま今も使えると考えない方がよい点に注意が必要です。利用を考えるときは、現行の制度内容を市へ確かめる必要があります。
リフォームと中古購入の補助は終了した
かつては市内の建設業者で自宅をリフォームすると工事費の10分の1で最大10万円、中古住宅を買ってリフォームするとリユース住宅活用サポート補助金で最大20万円が受けられました。2021年度の団地地区の実績はリフォームが38件、リユースが4件です。
ただしこれらの補助金は令和5年度の事業見直しで終了しています。現在使えるのは、木造住宅の耐震診断と改修の補助や、再生可能エネルギーと省エネ機器の設置補助などです。中古住宅の見方は北広島の中古住宅で築年別の売出事例まで整理していますので、購入を検討する段階ではあわせてお読みください。
※出典 ◆ 北広島市「木造住宅の耐震診断・改修補助」
容積率が50から60パーセントに緩和された
市は第一種低層住居専用地域の容積率を50パーセントから60パーセントへ引き上げました。2025年9月26日に都市計画の変更として告示済みで、検討段階ではなく実施済みの施策です。背景には地価の上昇と分筆の需要と子育て世代の取得ニーズがあります。
市の資料では、100坪級の宅地をおよそ48坪ずつに分ける例が示されており、狭い敷地でも住宅を建てやすくする趣旨が説明されています。
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
学校跡と大学が関わっていること

人口が減ると学校が余ります。北広島団地では、その跡地を別の役割に変える取り組みが進んでいます。
広葉交流センターいこ〜よ
旧広葉小学校の跡施設は、多目的コミュニティ施設である広葉交流センターいこ〜よになっています。国土交通省の資料でも小学校跡に福祉施設や交流施設を導入した再生事例として紹介されています。学校が減ることを地域の場が増えることに転換した例です。
校舎という大きな建物をそのまま活かすため、新しく建てるより費用を抑えられます。
※出典 ◆ 国土交通省「全国のニュータウンリスト」
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
大学との連携
2009年の北広島団地活性化計画では、大学や専門学校や研究機関と地域と行政の三者連携が課題として整理されました。空き家をどう使い直すかという課題は、行政だけでは扱いきれない部分があります。
近年では北海学園大学が2025年に北広島団地の空き家リノベーションに関する実測調査を行い、2026年度の実施に向けた準備を進めていることを公表しています。
※出典 ◆ 北海学園大学「地域・社会連携」
閉校した学校を交流施設に転用し、大学との連携を課題として掲げてきた流れは、縮小をただ受け入れるのではなく作り替えようとする動きと読めます。施設の使われ方は今後も変わり得る前提で見るとよいでしょう。
研究機関による調査
北海道立北方建築総合研究所は、既存計画住宅地の再生に関する調査研究の対象として、北広島団地と大麻団地などを取り上げています。少子高齢化、若い世代の流入、団地の魅力向上といった課題が整理されました。大麻団地と並べて扱われている点からも、造成の時期と規模が近い団地に共通する課題であることが読み取れます。
北広島団地は研究の対象になるほど典型的な事例として扱われてきたことがわかります。
※出典 ◆ 北海道立北方建築総合研究所 調査研究報告
移住促進サイトとイメージ戦略
2016年度以降、市は北広島団地イメージアップ事業として、若い世代を呼び込み多世代が暮らす地区にするための発信を続けています。さんぽまちという愛称とロゴ、移住促進サイトは、この事業と連動しています。愛称の制作が2017年度、ロゴの要綱が2018年3月と、事業の開始から1年ほどで形になりました。
愛称は思いつきではなく施策の一部として作られたものです。
※出典 ◆ 北広島さんぽまち(移住促進サイト)
※出典 ◆ 内閣府「地域住宅団地再生の取組事例(北広島団地)」
目的とシーンで選ぶさんぽまちの見方

最後に、どういう立場でさんぽまちを見るかによって、押さえるポイントが変わります。4つの場面で整理します。
移り住むことを考えている人
区画の広さと緑の多さは魅力ですが、高齢化率48.1パーセントという数字も同時に見ておきたい数字です。かつてのリフォーム補助は終了していますが、木造住宅の耐震改修補助や東京圏からのUIJターン移住支援金は現在も使えます。
移住の全体像は北広島への移住で支援金の額と条件まで整理していますので、市外から動く段階ではあわせてお読みください。
※出典 ◆ 北広島市「UIJターン新規就業支援事業(移住支援金)」
※出典 ◆ 北広島市「木造住宅の耐震診断・改修補助」
実家がさんぽまちにある人
親世代が1970年代に取得した100坪の家をどうするかという問題に直面しやすい地区です。市の住み替え支援協議会や空き地空き家バンクは、こうした相談を想定して作られた仕組みです。制度が動いているうちに情報を集めておくと選択肢が広がります。
リフォームと中古購入の補助は令和5年度で終了しており、使える制度は年度ごとに入れ替わります。
移住を考える人は環境の良さと高齢化の数字をセットで、実家がある人は親の家の今後を早めに、という向き合い方になります。立場によって見るべき数字が違うことを踏まえて情報を集めるとよいでしょう。
歩きに行きたい人
1周5kmのトリムコースと25の公園は、住んでいなくても歩きに行く価値があります。車道と交わらない区間が長いため、まとまった距離を歩きたい人に向きます。北広島駅の西口側から入ると、そのまま団地地区に入っていけます。
総合公園が1か所と近隣公園が3か所、街区公園が21か所あるので、途中で休む場所も選べます。
まちの歴史を調べたい人
北広島団地は市の都市計画審議会資料と国土交通省のニュータウン関連資料の両方に記録が残っています。公的資料だけで造成から現在までを追える珍しい事例です。北海道立北方建築総合研究所の調査研究や内閣府の地域再生の事例集にも取り上げられています。
数字を引用するときは、資料によって計画人口などに差があることに気をつけてください。市の資料が31,000人、国土交通省の資料が整理後27,000人としている例があります。
よくある質問

さんぽまちと北広島団地について、よく寄せられる質問をまとめました。
さんぽまちは正式な地名ですか
地名ではなく北広島団地地区の愛称です。住所の表記に使うものではなく、市が定めた要綱にもとづくイメージ戦略上の呼び名です。
虹ヶ丘や美咲き野もさんぽまちに含まれますか
含まれません。市の統計では虹ヶ丘が西の里地区、美咲き野が東部地区に分類されており、ロゴマーク要綱が定める団地地区の14町にも入っていません。
団地という名前ですが集合住宅ばかりですか
集合住宅は少なく、庭付きの戸建て用地を多くとった低密度の住宅地です。宅地の平均はおよそ100坪で、団地という言葉から受ける印象とは街並みが異なります。
北広島駅からはどのくらい離れていますか
団地地区はJR北広島駅の西口側に広がっています。地区が広いため、駅に近い町と離れた町では条件が変わります。検討する場合は町ごとに距離を確認してください。
まとめ
さんぽまちは、1970年に北海道が造成した北広島団地に2017年度に付けられた愛称です。宅地100坪と1周5kmの道という設計は今も残り、その一方で人口と高齢化の課題に向き合っている地区でもあります。
さんぽまちのなりたちを押さえる要点
- 愛称は2017年度に住民の意見を取り入れて制作された造語
- 造成は1970年度に北海道が開始し面積は約440.9ヘクタール
- 設計は宅地平均100坪・公園緑地31.3パーセント・歩車分離
- 人口は1995年の19,163人から2025年末の13,987人へ減少
- 高齢化率は令和5年度末で48.1パーセントで市平均を大きく上回る
- 市はフェニックスプロジェクトと2025年9月の容積率緩和で対応中


